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NanoBananaProで漫画を作ろう!【第2回】「存在しない続き」と漫画インペイント
Published 12/06/2025, 12:19:01 PM

<NanoBananaProで漫画を作ろう!第1回特集から続く>
目次
「7つの活用法」おさらい
実践6.ネームで構図を指示する
<①ネームから4コマ漫画をつくる>
<②ネームから1p漫画を作る>
実践7.漫画の「存在しない続き」を作る
実践8.逆に「存在しない導入部」を作る
<1枚絵から「前振り」を作ってもらう>
<キャラクターリファレンス用の設定画を作る>
<プロバナナ用脚本を作る>
<顔立ちをSDXLインペイントで統一>
実践9.Geminiに作品批評とアドバイスをしてもらう
<Geminiに寸評を求めてみる>
実践10.漫画の一部修正(漫画インペイント)
実践11.描写のパワーアップ・エフェクト
終わりに
「7つの活用法」おさらい
さて、第2回の検証を始める前に第1回の特集をおさらいです。まず、NanoBananaPro(以下プロバナナ)で漫画作りをする際のやり方としては、以下の7つの手法が考えられるということでした。
プロバナナ漫画「7つの活用法」
①おおまかお題指示
②セリフや構図を詳しく文章指示
③コマ割り・セリフを画像で指示
④ネーム指示
⑤空白部分や「続き」の生成
⑥漫画の一部修正(漫画インペイント)
⑦最終調整(描写のパワーアップ・エフェクト等)
それぞれ詳しい内容は第1回の記事をご覧頂くとして、このうち①②③については前回の実践1~5で検証し、十分実用レベルであることが分かりましたので、今回は④の「ネーム指示」から、残りを順番に検証していきましょう。
実践6.ネームで構図を指示する
前回はこのように、絵のない「カラのコマ割り画像」を入力することで、漫画全体の流れを固定して意図通りの作品に仕上げてもらうやり方を実践しました。7つの活用法でいうと、③に当たるやり方ですね。
キャラクター画像を参照させれば、このように概ね吹き出しの位置を守りつつ、ふさわしい絵の内容をプロンプト指示できることがわかりました。
今回はさらに、このカラのコマ割りに加えて「人物配置までトンチキ絵で指示するやり方」について掘り下げてみます。ネームのプロバナナ処理については、人気格闘漫画「ケンガンアシュラ」のだろめおん先生が既に試されていますが、プロのネームならこのように、非常に高品質な生成結果を得ることができています。
ただ、こちらのツリーを見ますと、「線が溶けていてちょっと直す程度でどうにかなるものではない。最初から手描きのほうが早いか、直す方が早いかなんとも判断がつかない」ともコメントされていて、プロ目線ではやはり完璧とは行かないようです。
とはいえ、これはプロの連載レベルの話ですので、SNSに投稿して楽しむ趣味の画像生成としては十分なクォリティに到達していると思います。こうしたプロレベルのネームを素人が手描きするのは非効率というよりそもそも不可能ですが、誰でも可能な「棒人間」レベルのトンチキ絵でも構図指定ができるかどうかがまず気になるところ。さっそく、次のようなお題で試してみました。
【2chコピペ "ポイントカードはお餅でしょうか"】
店員「当店のポイントカードはお餅でしょうか」
ぼく「えっ」
店員「当店のポイントカードはお餅ですか」
ぼく「いえしりません」
店員「えっ」
ぼく「えっ」
店員「まだお餅になってないということでしょうか」
ぼく「えっ」
店員「えっ」
ぼく「変化するってことですか」
店員「なにがですか」
ぼく「カードが」
店員「ああ使い続けていただければランクがあがってカードが変わりますよ」
ぼく「そうなんだすごい」
店員「ではお作りいたしましょうか無料ですよ」
ぼく「くさったりしませんか」
店員「えっ」
ぼく「えっ」
店員「ああ期限のことなら最後に使ってから一年間使わないときれます」
ぼく「なにそれこわい」
店員「ちょくちょく来ていただければ無期限と同じですよ」
ぼく「なにそれもこわい」
店員「えっ」
ぼく「えっ」
<①ネームから4コマ漫画をつくる>
こちらを、次のようなコマ割りで生成することにします。えんぴつでコピー紙に書いたものをスマホで撮影したものです。
吹き出しの文章も含めて生成してもらいたいので、次のような指示をします。
指示:@img1 のコマ割りをもとに、白黒の4コマ漫画を生成してください。コマは上から下へ、各コマは右から左に読みます。登場人物は @img2 の眼鏡の女の子と中年のおじさん店員です。 <1コマ目> 絵の内容:コンビニ。会計のカウンター越しに男性店員と女子高生が会話している。右に店員、左にミナちゃん。 店員「当店のポイントカードはお餅ですか」
ミナちゃん「いえしりません」 <2コマ目>
絵の内容:構図は同じで、右に店員、左にミナちゃん。
店員「まだお餅になってないということでしょうか?」
ミナちゃん「カードが…変化するってことですか」 <3コマ目>
絵の内容:構図は同じで、右に店員、左にミナちゃん。
店員「使い続ければランクがあがって変わりますよ」
ミナちゃん「くさったりしませんか?」<4コマ目>
絵の内容:手前に店員の後頭部。奥にミナちゃんがこちらを向いて立っている。 店員「期限のことなら一年間使わないときれます」 ミナちゃん「なにそれこわい」(心の声なので、吹き出しのかたちは放射線にする)
Freepikでこのように入力します。参照させているのは、さきほどのトンチキネームとミナちゃんの容姿です。
こちらが生成結果です。
コマ割りに書いた「後頭部」の意味が伝わらず、そのまま出てしまいましたが、文字ミス以外はおおむね意図通りになったようです。並べてみると分かるのですが、吹き出しの位置(コマのどのあたりにあるか)もきちんと守ってくれていますね。
ただ、1~3コマ目の人物はほぼ引き写しで、漫画としてはとても単調になってしまいました。これはプロバナナのせいではなく、雑なネームをちゃんと守らねばという意識づけが強すぎて、自由度が奪われてしまったために起きた現象ではないかと思います。
そこで、今度はネームによる縛りを行わず、前回のように先ほどのコピペをGemini 3 proにYamlプロンプト化してもらい、4コマ漫画化してみます。「ぼく」に当たる部分をミナちゃんの容姿として、Gemini 3 Proに次のように指示しました。
指示:これを四コマ漫画のyamlプロンプトにして。コマは上から下へ、各コマは右から左に読みます。「ぼく」のところはこの女の子のキャラデザにしてください。店員は男性です。店員「当店のポイントカードはお餅でしょうか」ぼく「えっ」(※以下コピペ全文)
Yamlプロンプトを要求したので、次のようなスタイルでの返答がありました。
こちらが全文です。
title: "ポイントカードはお餅ですか"
format: "4koma"
layout:
panel_order: "top_to_bottom"
reading_direction: "right_to_left" # 右の吹き出しから読む
characters:
boku:
role: "Main character (Left side)"
design: "Girl, black hair with green inner color, side ponytail, green hair ribbon, red framed glasses, white headphones around neck, grey cardigan, sailor uniform, green neckerchief, blue pleated skirt, cute, airhead expression"
clerk:
role: "Store Clerk (Right side)"
design: "Male, convenience store uniform, young, black hair, friendly smile"
storyboard:
- panel: 1
composition: "Clerk on right speaking, Boku on left looking confused"
dialogue:
bubble_1_right: # 店員
text: "当店のポイントカードはお餅でしょうか"
bubble_2_left: # ぼく
text: "いえしりません"
- panel: 2
composition: "Clerk on right looking puzzled, Boku on left asking back"
dialogue:
bubble_1_right: # 店員
text: "まだお餅になってないということでしょうか"
bubble_2_left: # ぼく
text: "カードが……変化するってことですか"
- panel: 3
composition: "Clerk on right explaining enthusiastically, Boku on left looking worried"
dialogue:
bubble_1_right: # 店員
text: "使い続ければランクがあがって変わりますよ"
bubble_2_left: # ぼく
text: "くさったりしませんか"
- panel: 4
composition: "Clerk on right explaining expiration, Boku on left looking terrified"
dialogue:
bubble_1_right: # 店員
text: "期限のことなら一年間使わないときれます"
bubble_2_left: # ぼく
text: "なにそれこわい"
英語主体のYamlプロンプトは加筆修正が面倒なので余り好まないのですが、まずはこちらのプロンプトだけで画像生成してもらいました。Gemini上での指示では、ミナちゃんの参照用画像を貼って「じゃあこれで画像生成して」と頼むだけです。
こちらが生成結果。
左右の立ち位置程度なら、わざわざ手描きでネームに起こして指示しなくてもプロンプトだけで再現できてしまうのですね。また、雑なネームを入力すると、そのテイストに引っ張られて全体のクォリティも下がりますし、先ほどの「後頭部」のような誤解も生じがちです。わざわざネームにする必要があるのは、普通に生成するのが難しい複雑なコマ作りのときや、もともと自分でネームが十全に描ける方で、その指示を厳密に守って作画してほしいときなどに限られるかもしれません。
<②ネームから1p漫画を作る>
そこで、今度は4コマではなく、少しアクションのある漫画の導入部をネーム指示で作ってみます。Clipstudioで作ったこちらの導入ネームを読み込ませると、どれくらい位置関係やポーズなどを守ってもらえるでしょうか。
指示はこのような感じ。例によって、ネームとともにミナちゃんの参照画像を与えています。
指示:1枚目のネームを白黒漫画化してください。 ネームは吹き出しやキャラクターの位置を指示するだけのものですから、厳密に守る必要はありません。登場人物はひったくり=Tシャツ姿の太ったおっさんと、眼鏡ポニーテールの女子高生(2枚目の画像)の二人です。コマは右上から左下に向かって読みます。1コマ目、「グラボ泥棒だーッ!」と誰かが叫ぶ声。大きなグラボの箱を抱えて目の前を猛スピードで駆け抜けていくひったくりを、片手にコーラを持っている女子高生が驚いた様子で見つめます。グラボには「RTX99990Ti」と書かれています。2コマ目、持っていたコーラの缶を握ってニヤリと笑う女子高生。眼鏡が光ります。3コマ目、持っていた缶を画面左奥に向けて投げる女の子。迫力のあるパースと集中線をつけてください。奥にコーラの缶が飛んでいきます。左上に小さくひったくりの後ろ姿を描きます。セリフ「てりゃあーっ!!!」擬音:ブンッ 画像のみで返答すること。
雑ネームに引っ張られて低品質化しないよう、一応念を押してあります。注意したところは、1コマ目は導入なので秋葉原の背景が欲しいこと、コーラを全てのコマで持っていることを強調することくらいでしょうか。位置関係が客観的に分かりやすく書いたつもりです。
こちらが生成結果。
カンのプルタブが空いているとあんまり当たっても痛くなさそうですが(笑) 構図はちゃんと守れていますね。立ち位置だけの指定だったさきほどの4コマに比べると、これくらい情報量が増えればある程度ネームで指示する意味があるかなと思います。
2枚を並べるとこのような感じで、正直私の絵をここまで忠実に守ってもらわないほうがもう少し品質は上がったような気がします。これを使いこなすには、説得力のある構図を手描きできるレベルの画力がないと難しそうですね。
良くも悪くも、書いたものが頭身やポーズも含めてかなり忠実に再現されるので、きちんと画面作りができていないと不自然になってしまう感じ。冒頭で紹介しただろめおん先生のケースのように、しっかりしたネームを手で描けるほど、AI任せにする必要がどんどん薄れてきますし、画力がトンチキすぎると生成画像の品質も下がるし…というジレンマがあるように感じました。
実践7.漫画の「存在しない続き」を作る
次は、ある作品をプロバナナに入力し、「存在しない続き」を作ってもらう検証を行ってみます。
例えば、ある4コマ漫画を見せて、存在しない「2話」を推論させたり、空欄にしてあるコマを埋めてもらったり、逆に最終コマから逆算して導入部を考案してもらったりと、さまざまな応用が考えられます。キャンバス外の「存在しない続き」を生成することをアウトペイントと呼びますが、こちらは「存在しないシーン」を追加するものなので、「シーン拡張」とか「エクストラシーン生成」のような手法と言えるでしょうか。
<4コマシリーズの新作を考えてもらう>
まずは、前回作った「武威裸夢様」の4コマをこのようにGemini Pro 3に見せて、続きを考えてもらいます。登場人物や舞台設定を応用して、テイストの一貫した「2話」を作ることができるでしょうか?
プロンプト指示はこのような感じ。特に目立った工夫はなく、スタンダードに依頼しています。
指示:この4コマ漫画シリーズの新作を自由に考えて画像生成してください。登場人物はポニーテールのAI部員とロングヘアのAI部部長が基本ですが、新キャラを出しても構いません。参考までに、この4コマを生成したときのプロンプトは以下の通りです。(以下、入力画像のプロンプトを貼り付け)
こちらが生成結果です。
おお…。
まあ、言いたいことはあれこれあるとして、どうしてこうなったかを考えてみましょう。
「最新のウソVRAMがAI部に届く」という導入はツカミとして普通に面白いですし、例の部長が「最新のVRAM様には生贄が必要よ」と言い出すのも1話のノリを踏まえた正当な展開に思えます。しかし、その勢いをオチにまとめる力がなかったり、ミナちゃんが描かれるべきところに部長が出てしまったりと、プロバナナ任せでちゃんと仕上げてもらうのは限界があるようでした。
「新キャラを出してもいいよ」という指示はアイデアを広げるつもりで書いたのですが、プロバナナはなんとしても新キャラを入れなくてはいけないと印象づけられてしまったようで、不自然に「VRAMの精霊」が出てくるオチになってしまったように見えます。1コマ目~3コマ目までの流れはいいとして、これが成立するオチにするには、人間が考えねばなりませんね。
あれこれ考えてみましたが、ミナちゃんが新型VRAMの「生贄」にされてしまうが、フタを開けてみたら思ってたのと違う「生贄」だった…というオチでまとめるしかなさそうです。4コマ目を「自転車をこがされて武威裸夢様に送電させられるミナちゃん」にすると、北斗の拳に出てくる世紀末の奴隷感があり、ヒャッハー部員の皆さんの親和性も高そうだな、と思いつきました。
そこで、このように指示して改善させました。
読み順がおかしくなってしまうのを防ぐため、キャラの左右配置を念押ししています。RTX9090Tiをどれくらいの大きさにするかは悩むところですが…とりあえずどんなものが出てくるか見てみましょう。
こちらが生成結果です。
うーん…さっきのVRAMの精霊オチよりはまだましですが、あれこれ間違いがありますね(バーイン!って何…?)
これはこまごまと修正を繰り返すより、いったんゼロベースでちゃんとした脚本を作って、何度かガチャをしたほうがよさそうです。
自分でイチから脚本を書くのは面倒なので、このように指示して文字起こししてもらいました。こういう壁打ちをしながら作りたいときは、Freepikよりも断然Geminiのほうが便利です。Freepikはちゃんと完全にプロンプトが固まってから本番生成するのに使うイメージですね。
Geminiが生成してくれた脚本に自分で手を入れて、さきほど第1話を作ったときと同じような脚本に仕上げ、Freepikに投げることにします。Geminiのような壁打ちには向きませんが、Freepikでは縦横比などを指示できますし、キューを連続で入れられるのが便利ですね。
入力画像は以下の3枚。1話の全体の4コマ画像とミナちゃん、部長のアップにしました。登場人物のうちどれがミナちゃんでどれが部長か、それぞれどんな顔立ちかを念押しすることで、キャラクターの一貫性を保ってもらう狙いです。
プロンプトは以下の通り。
指示:@img1 この漫画の続きを生成してください。
登場人物設定: 新人AI部員: @img2 ポニーテール、眼鏡、首にヘッドホン、セーラー服。 AI部部長: @img3 長い髪、余裕のある目つき、セーラー服。 AI部の皆さん: 「北斗の拳」のような劇画調の屈強な男たち。額に「武威裸夢命」のはちまき、白いふんどし、目の周りはマッドマックスのウォーボーイズのように黒く塗っている。
タイトル: 「AI部」(横書き、ヘッダー部分)
各コマの構成: 1コマ目 状況: ミナちゃんが部室で、グラフィックボードの大きな箱(側面に「RTX 9090Ti」「情熱大陸」と書かれている)を部長に見せている。 セリフ(部員): 「部長、ついに最新のRTX 9090Tiが届きました!」 セリフ(部長): 「あら、すごいわね。」
2コマ目 構図: 左側にポニーテール部員(横顔、少し不思議そうな顔)、右側に部長(表情は変わらないが、顔に影が落ちていて少しホラーな雰囲気)。 セリフ(部長): 「でもね、最新のGPUにはより大きな『奉納』が必要なのよ。」 セリフ(ポニーテール部員): 「奉納…?」
3コマ目 構図: 右側: 巨大なグラフィックボード(RTX 9090Ti)に向かって両手を上げ、熱狂するふんどし姿の男たち。 左側: その様子を見て顔面蒼白になり、焦っているポニーテール部員。 セリフ(男たち): 「9090Ti様に生贄をおささげするぞォ-ッ!」(叫び吹き出し) セリフ(ミナ): 「生贄って、私じゃないですよね!?」
4コマ目(オチ) 状況: 右側: ミナちゃんが必死の形相で発電用の自転車を漕ぎ、パソコンに送電している。 背景: ふんどし男たちが歓喜して盛り上がっている。 左側: 部長がその様子を満足げに眺めている。 セリフ(男たち): 「ヒャッハー!」「新鮮な電気だぜェーッ!」 セリフ(部長): 「これで武威裸夢様の一部になれたわね」
こちらが生成結果。なんとこれ、いっさい加筆なしです!
1コマ目のセリフ「9090Ti」の「i」だけ落ちてしまいましたが、ほとんどプロンプトを守れていますね。特に2コマ目の部長の昏い表情はイメージした通り。「表情は変わらないが、顔に影が落ちていて少しホラーな雰囲気」という指示をよく理解してくれたと思います。
もちろん、最終コマのミナちゃんの表情の詰めが甘かったり、「ヒャッハー!」が二度出てきたり、VRAM様が空中に浮いていたりと、修正すべきポイントはあるのですが、4コマ漫画として最低限の流れは作れたのではないでしょうか。これをもっと魅力的にするには、やはりオチのビジュアルがほんわかすぎると思うので、ミナちゃんまで劇画調になって猛然と自転車をこぐなど、何かしらの工夫が必要ではないかと思います。
実践8.逆に「存在しない導入部」を作る
さて、4コマ漫画の「存在しない新作」をある程度作れるなら、同じようにして「存在しない導入部」も逆算できるはずです。つまり、ある決めシーンのイラストを渡して「これが最終コマになる漫画を考えて」と頼んだり、4コマ漫画のオチだけを見せて「1~3コマ目を埋めて」と頼むような使い方ですね。
1コマ目からストーリー順にコマを埋めていくのではなく、先に最高の決めゴマを考えて、そこにたどり着く道のりを逆算していくというのは、実は漫画作りにおいて重要なテクニックだそうです。先にゴール地点になる一枚絵やセリフをバチッと決めてしまったほうが、お話し作りの難易度がぐっと下がりますし、作品の品質も担保された状態で作り始められるのですね。
ここでちょっと脱線して、逆算で漫画を作っていくやり方について少し触れておきます。
<ちょっと脱線:藤田和日郎先生の書かれていたこと>
「からくりサーカス」の藤田和日郎先生が漫画作りを説いた書籍「読者ハ読ムナ」に、「読み切りなら、一番見せたい絵をクライマックス付近の1枚に絞って、それを見せるために逆算してストーリーを作っていきなよ」(意訳)というくだりがあります。この本は2年前に買ったのですが、本当に全編説得力に満ちており、今でも何度も読み返しています。
ちょっと脱線してオタク話をさせていただきますと――
(オタク話ここから)みなさんご存じの名作「からくりサーカス」に登場するしろがね-O、ジョージ・ラローシュには、屈指の名シーン「私は……『ピアノをまた弾いてね』と言われたんだ」があるわけですが、藤田先生の解説を踏まえると、最初から丁寧にそのシーンの感動へ至るために布石が積み上げられていることが分かります。ジョージは初登場時から神経質で嫌なヤツとして描かれ、ヒューマニズムを上から目線で嘲笑するシーンがあり、かつて抱いていたピアニストになる夢を「お前の演奏は機械的だ」と指摘され挫折した過去が描写されます。戦い方も性格も「メトロノームのように機械的で合理的でつまらないキャラクター」として徹底的に印象づけられてきたからこそ、クライマックスの言葉や行動が美しく胸を打つわけです。
これらの前振りは、「最終的に見せたい絵」を明確にイメージした上で、あらかじめちりばめられているように思います。ご存じの名作「うしおととら」の各章を思い返してみても、各章クライマックスの「魅せゴマ」を決めて、逆算で描いていることが想像されます。(藤田先生ほどのストーリーテラーになると、もはや逆に考える必要もなくすらすらと出てくるのかもしれませんが)
私は初めて漫画を作り始めたとき、1コマ1コマ小さいボケとツッコミでくすぐっていくタイプのギャグしか思いつかず、連続したコマの大きな流れで落とすギャグやシリアス漫画の作り方がよく分からなかったのですが、この本を読んでなんとなく漫画作りの基本的思考が分かったように思います。 (オタク話ここまで)
…というわけで、前置きが長くなってしまいましたが、この「逆算で作る」をNanoBananaProでやるとどうなるのか、さっそく実験していきましょう。
<1枚絵から「前振り」を作ってもらう>
今回題材にしたのはこちらのイラストです。
これは無印バナナが出たときにテストかたがた作ってみた作品で、普段の私の作風とはぜんぜん異なるのですが、ドラマティックな構図や背景の指定をきちんとクリアできることに驚いたものでした。無印は日本語での文字入れができないので、腕章の文字部分のみクリスタで加筆しています。
イラストのイメージとしては、「ゾンビに溢れた崩壊後の東京で、仲間や市民を退避させるため危険なエリアに一人残った公務員メイド戦士の最後の一服」という感じ。残弾も尽き、孤立してしまってもはや脱出も叶わないけれども、カラっとした雰囲気で「あーあ、こんなとこで死ぬなら恋でもしてみたかったなあ…」とつぶやいているキャラクターを想像していました。これがもし最後の「決めゴマ」だったら、ここへ至る前振りはどんなふうになるでしょう。
<キャラクターリファレンス用の設定画を作る>
この画像だけは向こうを向いていて顔部分が分からないので、まずはストーリーより前に、プロバナナがリファレンスできるこのキャラの正面図を作る必要があります。いまどきのモデルは結構三面図がかんたんに作れてしまいますが、ここはやはりプロバナナにお任せしましょう。
こちらが生成結果です。
キャラ衣装はまさに!という感じですが、キャラクターの顔立ちは全然イメージと違いました。ここは、第1回の特集で検証したSDXLによるインペイントで、まず自分のキャラに寄せることにしましょう。
CN「Noobai Inpaint」をオンにしてから、このようにインペイント画面で顔部分を塗りつぶし、イメージしたプロンプトで生成するだけです。顔立ちは全く元画像を無視してほしいので、ノイズ除去強度は1としています。(詳しいやり方は特集第1回やインペイントが理解る!を参照のこと)
こちらが生成結果ですが…顔と体のタッチが違いすぎて、ちょっとマッシブすぎる気がしますね。特にこのがっしりとしたリアル足は、シンプルなアニメ顔とミスマッチすぎます。
ならばこのように、四肢もSDXLモデルでインペイントしてしまいます。衣装が変容しないように、ストッキングなしで腕に包帯、半袖などの情報は入れておきます。使用したプロンプトは「1girl,maid,bare legs, bandaged arm, short sleeves」です。
ついでに、ちょっと顔立ちがイメージと違ったので、ツリ目とたれ目の2パターン作り、ポニーテールの長さも変えてみることにします。
できたのがこちら。手足の不自然さは上手に解消されたのではないかなと思います。顔立ちは右のほうが「仲間のために死地に取り残されたけれど、あっけらかんと死を受け入れている健気なキャラ」のイメージに合ったので、こちらを採用することにしました。
<プロットを考える>
最終コマとキャラクターデザインが固まったので、今度は最終コマに繋がるストーリーを考えます。まずはいつもの「丸投げ」式でどんなものが出てくるか確かめてみましょう。
指示:@img1 のイラストが最終コマになる、2pのカラー漫画を作りたいと思います。このコマにつながる1ページ目を生成してください。セリフは縦書きの日本語で、コマは右上から左下へ読みます。主人公の容姿は @img2 を参照し、厳密に画風や顔立ちを守ってください。主人公はゾンビ駆除の公務員で、恐がりな小動物タイプ。仲間を逃がすためにゾンビに囲まれた住宅街に残り、弾切れになってしまいます。残念そうにしながらも、公務員としてやることはやれたと死を受け入れています。腕章や髪型、服の破れ具合など、キャラクターの容姿の一貫性を保ってください。 日本のカラー漫画で、右上から左下へ読みます。
こちらが生成結果。
うーん、これぞ虚無…。
本当にテキトーにそれっぽくつないだだけで、テンポ感もユーモアもペーソスもヘッタクレもない感じですね。ゾンビに囲まれた状態から屋上でのタバコシーンに飛ぶのは不自然ですし、無線で「ここは食い止める!」はいくらなんでも雑すぎます。プロが弾切れになって驚くのは演出とはいえダサすぎますし、キャラクターの顔立ちやイメージも全然違っていますね。
でも、この陳腐な導入を見せられると、「正解」をどうしたらいいかもおのずと見えてくる気がします。
<プロバナナ用脚本を作る>
さきほどの雑導入をベースに自分の中のイメージを加えて、次のような脚本を書いてみました。
指示:このイラストが最終コマの2pのカラー漫画を作りたいと思います。セリフは日本語で、コマは右上から左下へ読みます。主人公はゾンビ駆除の公務員で、弾切れになりますが、乾いた感じで死を受け入れています。腕章や髪型、服の破れ具合など、キャラクターの容姿の一貫性を保ってください。
• 全体: 日本のカラー漫画。右から左へ読む。夕暮れの廃墟。主人公は戦術メイド服のカツラギ(黒髪ポニーテール)。
• 1コマ目: スナイパーライフルを引き金を引く指のアップ。「カチッ」という書き文字。弾切れ。
• 2コマ目: マガジンポーチを探るが空っぽ。諦めたような表情。「……あーあ。あたしもとうとう、年貢の納め時か」
• 3コマ目: インカムに手を当てて報告する。「こちら3班カツラギ。……無念ですがここでコード404です。本部の健闘を祈ります」。無線からはノイズ混じりで「ザザッ…カツラ…待て、救援を…ザッ」と聞こえるが、彼女は「オーバー」と言って切る。
• 4コマ目(ラスト): カツラギのバストアップか半身。タバコを取り出し、ライターで火をつけている瞬間。「こっちは残弾があってよかったな…」
ここまでが1p目です。2pめは入力画像をベースに後で作るので、1pめを生成してください。
お国に殉じるプロっぽさと女の子らしさを共存させて、ゾンビアポカリプス世界のもの悲しさを出すのが狙いです。コード404というのは、弾切れして孤立したのでここで脱落ですさようなら…という符丁(のつもり)。普通に「ここでおさらばです」と報告するよりハードボイルドな雰囲気が出るかなと思い、言い換えをしてみました。
まずはキャラクター参照画像なしだとどのようなキャラデザになるか確かめたかったので、入力画像は最終コマになる夕日の一枚だけで生成してみます。
こちらが生成結果。
マ…マッシブ~!!
私のイメージでは、健気な小動物系の小柄メイドが男気を見せて散る、という感じだったのですが、これは凛々しくて頼りになる姐さんメイドの最期、という感じですね。最終ページと見比べると、ライフルのデザインはちょっと一貫性に欠けるかなという感じ。タクティカルベストも余計です。(Geminiでお試し生成したため、右下にウォーターマークが入っています)
今度はFreepikで、さきほど用意したリファレンス用画像とともに生成を指示してみます。
こちらが生成結果。
台詞はところどころ間違っていますが、おおむね意図通りの結果になっていると思います。ただ、顔立ちや表情はやっぱりNanoBanana風になってしまいますね。
<顔立ちをSDXLインペイントで統一>
さきほどリファレンス用の画像でやったように、今度も普段遣いのillustriousモデルを使って、顔部分をインペイントしてみます。
顔立ちや表情の付け方によっていろんな文脈が作れると思うので、ここは凝りたいところ。NanoBanana案のように「死を前にして気丈なクール姐さん」にもできますし、気弱そうな小動物系キャラなのにしっかり死を受け止めている奥深さも良いと思います。
私の好みはこれ。
気に入った顔になるまでプロンプトを変えながらインペイントを繰り返して、セリフや擬音などを加筆したものです。これが漫画として正解なのかは分からないのですが…でも自分が表現したいものにはなった気がします。なんとなく、こういう試行錯誤にきちんと力を入れるほど、AI由来のマスターピース感=「虚無」が少しずつそぎ落とせる気がしますので、AI創作の一番大事な工程なのかもしれません。
最終ページは「最終コマ」としてさきほど入力したイラストをそのまま使うのではなく、1ページ目と一貫性を保つべくレタッチしてもらいました。横の広さが少し窮屈に感じたので、先にPhotoshopの「生成塗りつぶし」で左方向へアウトペイントしてキャンバスを広げてから、このようにGeminiに読み込ませています。(Photoshopを使わなくても、プロバナナで普通にアウトペイントを指示すれば同じことができると思います)
こちらが生成結果。最初はこういうセリフを仮置きしておいて、より好みのエンドを考えました。
公務員としての殉教を描きたかったので、「全体の奉仕者」という言葉を使ってこのような終わり方にすることにしました。左は、一番最初に作ったイラスト。横幅が広がって余裕ができ、夕焼けの町並みが1ページ目に揃って、より自然につながるようになったのが分かるかと思います。カラスを飛ばす案もあったのですが、ちょっと不吉すぎるかなと思い、絶望なのにきれいな夕焼けを優先しました。
右下の「ガシャン!」はゾンビ映画の定番をやってみたかったんですが…ちょっと説明不足すぎましたね。1p目でドアをドンドン叩いていたゾンビ群が、ついに突破してきてしまったことを伺わせる不吉な音のつもりでした。今見ると「意味不明だな」と分かるのですが、こういう演出は時間を置いて見直さないと、ちゃんと通じる演出になっているか自分でわからなくなってしまいますね。
これで一端、私の漫画力の限界を迎えたので、できあがりです。ただ、心残りだったのは1ページ目下段の書き文字が鬼ダサいこと。せっかく美しいシーンと絶望感が同居するいいところなのに、全然調和感がありません。
これをどうしたら自然に見えるか自分では分からなかったので、「Gemini 3 Proに改善のためのアドバイスをしてもらえないか?」と思いつきました。
彼(彼女?)はストーリー作りは苦手でも、描画はある意味でプロ並み。学習してきた無数の漫画に根ざした言語化ができるなら、我々の漫画力をアップしてくれるよき編集者になってくれるかもしれません。
実践9.Geminiに作品批評とアドバイスをしてもらう
まずは、イマイチ書き文字が決まらない1p目をGemini3proに見せて、こんなふうに尋ねてみました。
すると、このチャットルームは直前までNanoBananaProであれこれ画像生成してもらっていた部屋だったためか、Geminiは文章ではなく画像のみで回答すべきと考えたようで、このような「改善案」の画像が出力されました。
おそらくGeminiは「このタッチのカラー漫画なら、背景にあった文字着色をすると自然に見えるんじゃない?」ということが言いたかったのでしょう。「ドン!!」などをよく見ると、もともとつるっとしていたブラシ自体にノイズ感が足されて、絶妙に荒い筆致になっていますね。「FWOOOSH」や「Click」などと英語の擬音が一部出てしまいましたが、ぱっと見たとき確かに私の書いたものよりも画面に馴染んで見えます。
どんなことを考えてこれを出力したのか、「思考プロセスを表示」を開いてみると、なかなか面白いことを考えていましたので、以下全文を引用します。漫画技法として正しいかどうかは置いておいて、「AIから見た漫画技法理解の現在」として、とても興味深い文章だと思います。
(引用ここから)
🍌カラーマンガテキストの評価
AI生成のカラーマンガにおける「擬音語」の不自然さについて分析しています。特に白黒マンガとの違いに焦点を当て、カラーマンガにおける擬音語の表現方法を検討しています。より自然な表現にするための改善点を模索しています。
🍌マンガの擬音語を評価する
AI生成のカラーマンガにおける不自然な擬音語を分析しています。特に黒/白/赤の線などの色彩が、背景や登場人物と調和していません。この「浮遊感」は、テクスチャ、ライティング、レイヤーの不統一、そしてマンガらしさを失っているフォントの選択に起因しています。より自然な見た目になるよう、擬音語を改良していくことが私の目標です。
🍌擬音語技法の洗練
生成されたカラーマンガにおいて、より自然な「擬音語」の必要性を分析しています。くっきりとした黒、白、赤の境界線がぶつかり合い、質感の違いによって浮遊感が強調されています。擬音語はシーンの照明とより一体化する必要があります。手描き風のスタイルとレイヤー表現を模索しています。マンガの慣習に沿ったフォントも検討しています。
▲AIが見ている私の書き文字
🍌マンガテキスト統合の改善
カラーマンガにおける「擬音語」をより自然なものにすることに焦点を当てています。手描きマンガ風のテキストの統合を模索しています。現状のテキストは背景と色がぶつかり合い、シーンから切り離されて表示されることがあります。テクスチャのあるブラシストロークを使用し、テキストにシーンライティングを適用することで、視覚的なブレンドを改善したいと考えています。目標は、デジタルオーバーレイというより、アートワークの一部のように感じられるテキストを作成することです。擬音語の統合性を高めるために、より風化した、あるいは傷んだような外観を試しています。
🍌タイポグラフィの進化を分析する
アウトプット作品におけるタイポグラフィの進化を検証しています。文字の不自然さは改善されたようです。「ドン!ドン!」や「ギャー!」といった効果音は、フラットな塗りから手描きの筆致のような質感へと変化しました。アウトラインも、荒々しく力強い印象を受けています。こうした変化と、視覚的なストーリーテリングへの影響に注目しています。
🍌画像統合の最終処理
タイポグラフィとビジュアルフローを確認中です。テキストのぎこちなさは完全に解消されました。「ドン!」や「ギャー!」といった効果音は手描き風のブラシテクスチャになりました。以前は別々だったビジュアルスタイルとライティング要素も、完全に一体化しました。この成果物には自信があり、私の考えを最終的に表現したものと考えています。
(引用以上)
色んなことを考えているものですね。
私は自分の書き文字がへただから(センスがないから)浮いて見えるのだと思っていたのですが、AIは「アートワークの一部のように感じられるテキストにすべきだ」「風化した、あるいは傷んだような外観がこの漫画にはふさわしい」と判断したようです。確かに、黒一色でフラットな文字よりも、茶系のグラデーションがかかった方が見やすいですし、悲鳴や破裂音といった不吉な音なら、もっと荒々しい筆感のあるブラシで描いたほうがふさわしいと感じます。要するに、まんがが高品質な手描きを模倣したAI絵であるのに大して、書き文字だけデジタル合成した感じがあり、浮いてしまったということですね。
これまでもChatGPTに作品を見てもらうことはありましたが、基本的にあんまり分かっていない感じの「雑な褒め」しか出てこないし、改善案を尋ねてもあまり参考にならないアドバイスしかしてくれないのが普通でした。今回はたまたまうまくいっただけかもしれませんが、こうしてある程度実用的な対話ができるようになってきたのは大変画期的に感じます。
<Geminiに寸評を求めてみる>
今度はこのように、作品全体の寸評と改善策の提案を求めてみました。
まず、この漫画を誤解なく読めているかを確かめるために、作品内容を言語化してもらいました。
過不足なく、どういう趣旨の漫画かは理解できているようです。
次は「良いところ」です。的確な「褒め」は創作のガソリンなので、AIだろうがなんぼあってもいいですからね。
「すまん、そのコマ割りは君が考えてくれたんだよ…」という気持ちになりますが、とりあえずありがたく受け止めておきましょう。
次がメインの「気になるところ」です。
おお、これは全く予想しなかったアドバイスですね。特に「1」はその通りです。読者からは一体どういう状況なのか分からないままに進んでほしい狙いもあったので、「そういう漫画なんだよ」と言い訳もできるのですが、もっと工夫すれば、うまくそうした画面との整合性を取る工夫もできたでしょう。
「2」は私に銃の知識が全くないので、言われて初めて気付きました。そもそもこの銃は現実に存在しないウソ銃なので、資料と見比べて間違いに気付いたり修正することができません。本来なら、実在する銃を画像参照させるべきでした。AIによる寸評は、そうした自分の中に答えがないミスに気付くきっかけになるかもしれません。
「3」は正直、そこまでちゃんと読めるんだ?と驚きました。じゃあ半透過の吹き出しにしたらより良いかというと、ちょっとクサくなりすぎちゃう気もしますし、夕陽への視線誘導でもあるんだよ!とこちらも言い訳できますが、作者の都合は無視して編集者から見るとこうなんだ、という目線が好ましいです。
最後が「改善方法」です。
案A・B、定番ですが効果的な気がします。「カチッ(弾切れ)」で始まるより、ずっと分かりやすい導入ですね。下手な画力だと余計陳腐になりそうですが、やってみる価値がありそうに思えます。
銃のサイズは、正直サイズよりもデザインに問題があるように思えるので、今後の反省点として覚えておきます。私は普段漫画を読んでいて、学生時代にやっていた楽器が出てくると「ここが違う!」と気になってしまうことがよくありますが、同じように銃器に愛着のある人がみるとすごくヘンな描写になってしまっていたようです。よく知らないものを登場させるのは怖い!
「最後の"カチッ"」は、右下の「ガシャン!」のことを言っているようですね。
やはりこの「ガシャン」、オマケ要素のつもりでしたが、きちんと前フリがなかったせいで読者とのコミュニケーションが取れてないことが実感できます。さきほどのアドバイス通り、1コマ目にドンドン叩かれているドアを描いておけば、一石二鳥で解決できそうですね。
例えば、背後に向けて銃をバンバン撃ちながら廃ビルの階段を駆け上ってくるカツラギ、押し寄せるゾンビ、バァン!と屋上のドアが閉まって、ずるずる…とへたり込む1ページ目などがあると、にわかに読み切りの導入っぽくなる気がします。そこで、次のような「存在しない導入の導入」を作ってもらいました。
指示:1ページ目の前に入る導入部を画像生成してください。セリフは日本語で、コマは右上から左下へ読みます。主人公はゾンビ駆除の公務員で、弾切れになりますが、乾いた感じで死を受け入れています。腕章や髪型、服の破れ具合など、キャラクターの容姿の一貫性を保ってください。背後に向けて銃をバンバン撃ちながら廃ビルの階段を駆け上ってくるカツラギ、押し寄せるゾンビ、バァン!と屋上のドアが閉まって、ずるずる…とへたり込む…という感じです。ただし、画風やキャラクターの容姿は厳密に一貫性を持たせてください。
入力画像は漫画2ページです。こちらが生成結果。
とりあえず要求されたものはできました、という感じで、なんというか学習漫画っぽくなりましたね。これも虚無。
「くそっ、多すぎる!」はいくらなんでも説明調すぎるので、ほぼ1ページまるまる使い、下図のような肩越しショット見下ろしの主観にして迫力を出したほうがよさそうです。その上で、ドアを閉めるところは絵をできるだけ省略し、音だけで描くなりして、もう少し自然にしないとだめな気がします。雑ですが、このような感じでしょうか。
その上で、「はぁ、はぁ…」のコマを本来の1コマ目(弾切れのシーン)の代わりに持ってきて、無線につなげると、もう少し自然に読めるのではないかなと思います。つっかえ棒とかバンバン叩くエフェクトも入れたほうがいいですね。
ただまあ、SNS漫画だと、導入をリッチにするよりともかく勢いが大事!ということもあるので、どっちが正解というのでもないと思います。プロバナナがありがたいのは、「マスピ展開だとこうなるよ」という例をサクッと提示してくれるので、「自分ならこうするけどなあ」というセカンドアイデアに結びつきやすいことですね。
ひとりで漫画を作っていると、どうしても自分の中だけでちゃんと伝わっている気になってしまうことが多いので、こうした壁打ちと試行錯誤を繰り返すことで、ありきたりなマスピ展開を自分の作品に近づけていくのが大事だと感じます。
実践10.漫画の一部修正(漫画インペイント)
さて、ここまでは物語を作る「攻め」の活用法でしたが、ここからは仕上がってきた画像のミスを直す「守り」の活用法に入ります。
まずは、いわゆる作画ミス部分の「修正」にあたる作業をどのように指示するとうまくいくかをあれこれ検証しました。こちらのエッセイ漫画を題材に、順を追って作り方を見ていきます。
こちらのエッセイ漫画は、電車内で見掛けた光景をこんな感じでXに投稿しようとしたときに、「せっかくならこれを絵付きのエッセイイラスト風にできないだろうか」と思いついて作ったものです。
単なる思いつきでしたので、最初はこの投稿文をそのまま指示文に盛り込んで、次のように指示しました。
指示:次のツイートをイラストにしてください。「けさ、電車に盲導犬を連れた方がいらして、ラブラドールだと思うんだけど座席の下の空間にきれいにおさまって、座ったユーザーさんの足の間から顔を出してお利口にしてて感動した。目的地についたら立ち上がって、ちゃんとユーザーさんが立つスペースを作っていた。偉い。」ユーザーさんはサングラスをして帽子をかぶった上品なおばあさん。「私」は画像のポニーテールの女の子にしてください。白い背景に3つのシーン(私が盲導犬ユーザーが電車に乗るのを見掛けるシーン、座ったユーザーさんの足の間から伏せた盲導犬がおりこうに顔を出しているシーン、目的地に電車がついて立上がるユーザーさんの前に盲導犬が横向きに立って、立上がるスペースを作っているシーン)が浮かぶように描き、「」内の文章を適切に配置してください。コマ割りの線は不要です。3つのシーンが白背景に浮かぶような構図にしてください。
こちらが生成結果。
この、各イラストのへりがちゃんと手塗りのようににじむところ、すごくイメージ通りです。「3つのシーンが白背景に浮かぶような構図」としか言語化できなかったのですが、よく理解してくれましたね。
文字色もやや茶色がかっていて、やわらかいフォントで自然に溶け込んでいます。ちょっと文面が固いので、次のようにプロンプト変更しました。
指示:次のツイートをイラストにしてください。「けさ、電車に盲導犬を連れた方がいらした」「ラブラドールだと思うんだけど座席の下の空間にきれいにおさまって、座ったユーザーさんの足の間から顔を出してお利口にしてて感動した」「目的地についたら率先して立ち上がって、回りに立っている人たちにぶつからないよう、ちゃんとユーザーさんが立つスペースを作っていた。超偉いね…」ユーザーさんはサングラスをして帽子をかぶった上品なおばあさん。「私」は画像のポニーテールの女の子にしてください。白い背景に3つのシーン(私が盲導犬ユーザーが電車に乗るのを見掛けるシーン、座ったユーザーさんの両足の間から伏せた盲導犬が顔を出しているシーン(電車の座席は @img2 のように空中に突き出すかたちになっており、座席下には犬が横になれるスペースがあります)、座席から腰を浮かして立とうとするユーザーさんの前に盲導犬が横向きに立って、周囲に立っている乗客にぶつからないようスペースを作っているシーン)が浮かぶように描き、「」内の文章を適切に配置してください。コマ割りの線は不要です。3つのシーンが白背景に浮かぶような構図にしてください。必ず、ユーザーさんの両足の間から盲導犬の顔を出している構図を描くことが重要です。
こちらが生成結果。
実際はこの画像に行き着くまでにあれこれ細かくプロンプトを変えてみたり、ガチャを繰り返したりしているのですが、女性の足の間から犬が顔を出している絵がどうしても安定して出せませんでした。このイラストは全体の風合いとミナちゃんの表情がとても良いのですが、文字部分の処理が雑なのと、ラブラドールが私が見た光景と違って上手に座席の下におさまっていないこと、ミナちゃんがバッグを座席の上に置いていてお行儀が悪いこと、最終コマでラブラドールが他の乗客にユーザーさんがぶつからないようにしていることが分かりにくいことーあたりが気になります。
そこで、今回のプロバナナによる漫画インペイントを試してみました。
まずは文字部分の処理です。モノローグが吹き出しのようになってしまっているので、それぞれをクリスタで白く塗りつぶしてしまいます。これは、生成でわざわざやる必要がないので、あとからClipStudioで文字入れした方が簡単そうですね。その上で、このように赤のペンツールで修正したい部分を指示してみました。
指示:指示に従ってミスを修正してください。右上で座っているおばあさんの手に、左上と同じ白杖を持たせてください。伏せている犬が座席の下からはみだしているので、もっと体全体を座席の下におさめてください。顔だけ女性の足の間から出しています。ポニーテールの女の子のヘッドホンのデザインを同じものに統一してください。左下の赤い丸の位置に、立っている乗客を1人描いてください。そのほか、不自然に途切れている部分は補ってください。
こちらが生成結果。
ヘッドホンのデザインや2コマ目の白杖が直りませんでしたが、おおむね意図に近いものができてきました。ラブラドールの位置はなかなか難しかったですね…。本当は、女性の両足の間から「にょきっ!」とまっすぐ頭が出ていて、見事に座席の下におさまっていたんですが。
白杖の部分はもう丸をしなくても言語指示だけで直せそうですので、上の画像をそのまま入力して、「指示に従ってミスを修正してください。右上で座っているおばあさんの手に、左上と同じ白杖を持たせてください。伏せている犬が座席の下からはみだしているので、もっと体全体を座席の下におさめてください。ポニーテールの女の子のヘッドホンのデザインを同じものに統一してください」と再指示。
こちらが生成できました。
あとは、クリスタでヘッドホンなどのミスを直し、文字入れをしてできあがりです。
赤ペンを使って修正箇所を明確化したほうがいいか、それとも言語指示だけで十分かはケースバイケースだと思います。間違えている部分を言葉で指示しにくい場合は、「赤ペン法」の出番かなという感じがしますね。ただ、赤ペンの線が消えないで生成結果に残ってしまうこともまれにありましたので、あまりたくさん赤を入れすぎるのは逆に混乱のもとのようです。
失敗例も含め、生成例をざっとならべるとこのような感じ。漫画を作っているというより、作画担当とやり取りしながらブラッシュアップしている感じが強い製作フローですね。
実践11.描写のパワーアップ・エフェクト
最後に、間違えている部分の修正ではなく、完成した漫画の描写をパワーアップさせる方向の漫画インペイントについても考えてみます。例えば、こちらの漫画をもう少し迫力を出せないでしょうか。
このテスト漫画を生成したプロンプトは以下の通りです。
指示:@img1 の女の子がパンチを振りかぶり、オッサンをぶっ飛ばしている白黒の2コマ漫画。上のコマで女の子が「アンタみたいなのを…」と言いながらパンチの予備動作をし、下のコマでおっさんの顔面に見事ヒットしています。2コマ目には「『女の敵』っていうのよ!!」大迫力ですが、拳がめりこんでいるおっさんの顔はコミカルです。擬音はドゴォ!!!!です。後ろは迫力のある流線にしてください。1コマ目はパンチをまだ繰り出しておらず、構えているだけです。
ちなみに最後の一文を入れないと、このように最初からパンチを繰り出してしまいました。内部でGeminiが翻訳するときにうまく「振りかぶる」のニュアンスを伝えられてない感じがしますね。
さて、このように「エフェクトやアクションをもっと派手にして、大迫力にしてください」と頼むとどうなるでしょうか。
こちらが生成結果。
擬音が変更されてしまったのは惜しいですね。また、ちょっと魔法や超能力のように見えるエフェクトなので、現代漫画の場合は不自然に見えそうです。
並べるとこのような感じ。さりげなく土煙も追加されていました。
そこで、もう少し指示を詳しくしてみると…
魔法っぽさを消しつつ、擬音もそのままにできました。
<カラー化>
エフェクト強化だけでなく、カラー化などのテイスト変更も可能です。さきほどのパンチ漫画を読み込ませて「カラー漫画にしてください」と指示すると、このように漫画テイストを残しながらカラーにできます。
ただ、瞳の色を間違えてしまっているので、ガチャか修正は必要ですね。また、これを普段のSDXL画風に寄せるとなると、かなり大変な作業が見込まれます。今回の特集全体に言えることですが、簡単便利に使えるようでいて、一貫性や作家性を保った作品にするのはなかなか難しいでしょう。
例えばこちらの2枚、キャラクターは同じではありますが、画風はどうも一貫性に欠けるように思えます。もし顔だけインペイントしたとしても、線のテイストに違いが出ているので、そう簡単になじませられるかというと微妙ですね。
本当に一貫性を保ったきちんとした作品として作りたいなら、この画像を「AIネーム」扱いするのがよいかなと思います。こちらの画像のように、キャラクターだけを削除して背景だけにし、今度はそこにおさまるキャラクターをSDXLで作り込んで、再び合成するようなやり方ですね。
または、地道にインペイントを繰り返して直していく手法もありかもしれません。こちらは、普段のSDXLモデルでミナちゃんの顔にのみNoobai Inpaintを掛けたものです。
やはり、顔部分だけ寄せてもそこだけ浮いてしまうので、こまごまとインペイントを重ねて不自然さを取っていくほかないようです。AIネームを作る段階で、だろめおん先生のように目指す画風の画像を渡してあげて、整合性を取るほうがスムーズかなと思いますが、このあたりはさらに検証が必要ですね。
このほか、水彩画風にしたり、光のエフェクトを加えたり、カラーの調整をするなど、漫画の演出をさまざま強化できるようです。私のような初心者の場合、集中線や流線、電撃エフェクトなどはクリスタの素材に頼りがちですが、どのように迫力をアップすればいいか見当がつかないことが多いので、プロバナナにざっくり頼んでお手本を見せてもらったり、素材そのものを生成してもらったりするのが良い使い方かなと思います。
終わりに
というわけで、第2回も長くなりましたが、「NanoBananaProで漫画を作ろう!」でした。今回は第1回よりもう少し踏み込んだ漫画作りをあれこれ試しましたが、プロバナナは相当に自由度が高く、上手に指示してあげればいろいろな面白いことがまだまだできそうな底力を感じます。
カツラギの漫画はちょっと心残りもあれこれあるのですが、このような後日談というか「オチ」を作れたので、満足しています。(こっちの方がウケちゃいましたね)
プロバナナを使うと漫画をどんどんリッチに盛っていくこともできるのですが、本当に大事なのは意図を明確にすることで、全コマカラフルで書き込み量の多い背景を入れるとやはりうるさく感じてしまいます。削るべきところは削ってメリハリやテンポ感を出さないと、なかなか自然に読める面白い漫画にはならないようです。
そうなると、結局は漫画が分かっていないと上手な指示もできないーということに陥りがち。ただ、盲導犬のエッセイ漫画のように、自分の見た光景や体験したことを絵心がなくてもそのまま伝えることができるようになってきており、「AIも本当に素晴らしいツールになってきたな」としみじみ感じます。
最後に少し触れた「画風の一貫性をどう保つか」も解決できていない難題ではあります。ただ、1話から2話を想像させた「武威裸夢様」では、きちんと一貫性が保てていましたね。
ただ、左右をよく見比べると、部長の顔などはほとんど変化がないことがわかります。多少角度が変わったり、影が落ちたりはしていますが、内部的に使いまわすことで画風を維持しているのかもしれません。
NanoBananaは無印のころから、プロンプト追従性は非常に高いけれども、画風はやや変わってしまうのが弱点でした。入力画像の顔立ちや画風をそのまま維持するのはSeedream4のほうが得意でしたね。Seedreamは先日「4.5」がデビューしたばかりですが、Sousaku.AIで試してみたところ、漫画用途にはまだまだ…という感じの実力でした。
どんなときも、そのときそのときの手元技術で一番スムーズに作れる方法を考えるほかないのですが、次のNanoBananaになったら今の悩みはまたおおかたが解決するような気もしますので、やきもきしますね。でも、今苦しまないといつまでたっても次のモデルを待つばかりで何も作れませんので、あるもので戦うしかないな、というのが今回の記事で感じたことでした。
それでは今回はこのへんで。引き続き、プロバナナを中心に新たな活用法をあれこれ試していきたいと思いますので、こんなやり方を検証してほしいというアイデアなどがありましたら、コメントにてお寄せください。スタジオ真榊でした!
Attachments (78)

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