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画像生成AIユーザーのためのCLIPSTUDIO超入門【第3回】AIイラスト修正 実践編
Published 03/29/2026, 10:41:43 AM · Edited 03/31/2026, 11:19:53 AM

<記事内容の要約>
・「AIで直せるところは先に直す」を前提に、絵が描けなくてもAI絵を修正する手法と基礎知識が分かる
・瞳の修正を題材に、「サブビュー」「クリッピング」「透明ピクセルロック」「合成モード」「不透明度操作」「スマートシェイプ」などの重要操作をマスター
・人力で修正できない部分はNanoBanana任せ。クリスタと組み合わせた「人力ADetailer」でいいとこ取りする
「第3回」からはいよいよ実践編。クリスタの導入と初期設定、おすすめ素材の導入までは済んでいるという前提で、具体的に何をどうしていくのかを掘り下げていきます。今回はマイナスをプラマイゼロに近づける「修正編」で、次回がAI絵の魅力をプラス圏へ持っていくための「仕上げ編」、続いて「漫画編」と連載していく予定です。
画像生成されたイラストはたいていどこかが破綻しているものですので、それをCLIP STUDIO PAINT(クリスタ)を使って正しく見える形に修正するために必要な知識を順序立てて見ていきます。もちろん今回も、絵心がないか、絵を描く習慣がない画像生成AIユーザー向けに「クリスタとペンタブさえあれば誰でもできる」「フリーハンドで線は引かない」ルールでまとめていきたいと思います。
ただし、いきなり目の塗り方から入るわけではなく、AI絵を修正するにあたって最低限理解しておくべき「AI絵とデジタル絵の違い」と「クリスタで絵を描くときの基本操作」だけ押さえさせてください。クリスタでデジ絵を描いたことがある、レイヤーや各種機能の知識はちゃんとあるという方は、適宜飛ばしつつ読み進めて頂ければと思います。【約2万1000字】
第1回、第2回はこちら。
目次
【前提1】生成段階でできるだけ修正する
<Hires.fix/ADetailerおすすめ設定>
<瞳が溶けるときの原因チェック>
<バリエーション生成を併用する>
<手の修正はどうすべきか?>
【前提2】AI絵と通常のデジタル絵の違いを理解する
①細部の描画が「溶ける」
②独特の「色むら」がある
③「文脈のおかしさ」が生じる
④キャラ設定との矛盾が起きる
<サブビュー機能を使いこなそう>
【前提3】デジタル絵の作画作業を理解する
<高品質な線画を抽出するには>
<塗り作業の進め方>
<参照ボタンとレイヤーロック>
<なぜレイヤー分けするの?>
<重要機能1:下のレイヤーでクリッピング>
<重要機能2:透明ピクセルをロック>
<重要機能3:合成モード>
<重要機能4:不透明度の調整>
実践
瞳の修正
<TIPS①:スマートシェイプを活用しよう!>
<TIPS②:投げなわ塗りツールを活用しよう!>
<コラム:錯視を誘う「タンジェント」>
<生成段階で作業をラクにしよう>
上級編
<TIPS③:人力ADetailer>
<重要機能5:レイヤーマスク>
小括
【前提1】生成段階でできるだけ修正する
クリスタを使ったAI絵の修正は、基本的に溶けてしまった部分を塗りつぶしてレタッチするやり方で行います。ただし、何でもかんでもクリスタで直そうとするのはNG。AI段階でできるだけ正しく描画して、手でやった方が早い部分だけをクリスタで修正するのが、最も重要なポイントです。
特に、アップスケールをきちんと施していない画像をクリスタで修正するのはおすすめしません。例えばこちらのイラストのように、目などの細部が完全に描画しきれていなかったり、画像サイズが十分拡張できていなかったりするものは、生成段階で済ますべき作業が終わっていません。Hires.fixやi2iアップスケールで全体の線画と塗りを整えつつ、顔周辺の線が入り組む部分にはADetailerも掛けてきれいに描画することを徹底しましょう。
▲線が複雑に入り組む部分が溶けている
こちらは、上の画像と同一設定・同一Seedで、HiresとADetailerをONにしたもの。瞳の中や指はまだ乱れていて修正が必要ですが、アップスケール前より格段に整えやすくなっています。
<Hires/ADetailerおすすめ設定>
Hiresアップスケールの設定がよくわからなかったら、始めは「R-ESRGAN 4x+Anime6B」というアップスケーラーでノイズ除去強度0.35、ステップ13、アップスケール倍率1.5倍で掛けてみましょう。「Lanczos」などもおすすめです。
ADetailerは「face_yolov8n.pt」を選んで、「Inpaint」タブからノイズ除去強度0.35、パディングは32px、「Use separate width/height」で1024x1024pxと設定すると安定しやすいのではないかと思います。こうすると、顔が常に正方形に切り抜かれて0.35強度でi2iされ、ふちを32px分ぼかしてまた同じところにおさめられます。ステップ数はお好みで。顔周辺の四角形がぼやっと見えてしまうときは、ノイズ除去強度をぐっと下げたり、「Inpaint mask blur」の値をより強めて対応します。
アップスケールやADetailerの詳細については、こちらの記事に詳しいです。まずは10-20stepくらいの低ステップで構図を探り、良いseed値が定まったら、30stepほどに上げてHires+ADetailerをオンにして本番生成するのが基本かなと思います。
<瞳が溶けるときの原因チェック>
HiresとADetailerを掛けても、瞳の中がぐちゃぐちゃなままになってしまうことがあります。そういうときは、まずプロンプト指示同士が喧嘩していないかチェックしておきましょう。よくあるのは、瞳の描き方が異なる複数のクリエイター名タグを適用していたり、@_@やempty eyes、ringed eyesなど瞳の描画指示を重ね掛けしていたりして、モデル本来の画風と衝突しているケース。学習した内容と矛盾する指示をなんとか両立させようとして、おかしな瞳が(ある意味プロンプト通りに)生成されてしまいます。
他にも、上手に学習できなかった画風LoRAを適用していたり、LoRAをいくつも適用しすぎていたり、思わぬタグが副作用として悪さをしていたり、原因はいろいろ考えられます。版権キャラの瞳がおかしくなるときは、そのキャラタグが覚えている公式絵の瞳の構造とモデルや画風LoRAが覚えている瞳の描き方が衝突しているケースもあります。キャラタグの強度を強めたり、画風LoRAの適用強度を弱めたりして調整すると改善するかもしれません。
▲某キャラの瞳とモデルの画風が喧嘩しているケース
<バリエーション生成を併用する>
「構図もポーズもライティングもほとんどいいのに、指だけが6本指になっている」とか、「髪とまつ毛の位置がちょっとだけイメージと違う」といったときも、いきなりクリスタで修正しようとするのではなく、生成段階で修正できないか試みましょう。こちらの「バリエーション生成」を使うと、あるSeed値をベースに「ちょっとだけ違う」生成結果を量産できますので、構図を大きく変えずに指やポーズを直したいときに便利です。
もちろん、NoobAIインペイントやNovelAIインペイントでピンポイントで修正するのも有効。クリスタによる修正は「生成段階でやるのが逆に面倒な作業」に絞って行うのが基本と考えてください。
<手の修正はどうすべきか?>
SDXLでの生成では、今も指が6本になったり、関節の向きが不自然になったり、手全体が崩壊してしまうことがあります。こうした部分の修正がバリエーション生成やインペイントでも思うようにならない場合は、NanoBanana(Pro/2)などに任せるのが良いでしょう。
こちらは、さきほどのイラストを入力して「この画像の手が不自然になっているので、一度消して修正してください。構図やアートスタイル、カラー、ライティングの変更はせず、どうしたら自然になるか考えて修正してください。」と指示したもの。(freepik使用、NanoBananaPro、サイズ:auto指定)
元画像と比べると、きれいに直っています。ただ、奥側の手だけ修正してもらいたかったところ、勝手にポーズ変更して左手を加えてしまいました。
「どんな画像でも手だけをきれいに一発で直すNanoBananaPro/2用の万能プロンプト」があればよいのですが、入力画像によってさまざまなバイアスが働くので、このような余計な付け加えや誤解をすることがよくあります。とりあえず結果を見て、「このキャラクターはこういうポーズをしています」とか、「○○はしないでください」と足すか、余計なことをしている画像を新たに入力画像にして「この部分をこう直してください」と指示するのが早いかと思います。
ピンポイントで修正したい場合は、以前漫画作りで紹介した赤丸で囲う指示手法も有効です。ちょっと面倒ですが、クリスタでもなんでもいいので、適当なブラシでぐるっと適当に囲って入力画像にするだけです。
「赤い丸で囲った指の描画が不自然になっているので、いったん消して修正してください。アートスタイル、カラー、ライティングの変更は不可。丸で囲われていない部分の変更は不可。赤い丸は残さないこと。」と指示すると、もう片方の手を追加されることなく意図通りに修正できました。(こちらはNanoBanana2)
【前提2】AI絵と通常のデジタル絵の違いを理解する
AI絵が通常のデジタル絵とどのように違うか理解しておくと、おかしい部分を見分けたり、より自然に修正したりできるようになります。AI絵には主に、以下の4つの特性があります。
①細部の描画が「溶ける」
②独特の「色むら」がある
③文脈のおかしさが生じる
④キャラ設定との矛盾が起きる
ここは重要なところなので、一つ一つ見ていきましょう。
①細部の描画が「溶ける」
ご存じの通り、AI絵はその仕組み上、キャンバス上の狭い範囲に複雑な構造のものを描画しようとすると線や塗りが溶けがちです。それを補修するためにアップスケーラやADetailerがあるわけですが、それらをきちんと施しても、線画が入り組んでいる細部はアップで見ると不自然になっていることが多いです。
特に顔周辺は線画が入り組むので、まつ毛と前髪のラインが溶けてくっついたり、先端が途切れたり、接線のようになったりする現象が起こりやすいです。例えばこのような感じ。
この画風はフラットな塗りが特徴なので、グラデーションをうまく処理できず、瞳の中に不自然な「段」ができてしまっています。まずこの瞳の色をすっきり塗り分けたいですし、溶けているまつ毛のグラデーションや形状も直したいところ。眼鏡や頬の斜線(///)も直したいですし、丸まっている髪の毛の先もシャープにしたいですね。これを生成段階で直そうとするとむしろ大変な作業になりますので、人間がクリスタで修正したほうがラクなポイントです。
下図は左側だけちょちょっと手で直した例。はなはだ雑ですが、右と見比べると、不自然な部分が改善されているかと思います。
②独特の「色むら」がある
AI絵はモデルが学習内容に従ってベクトル計算し、色のピクセルを「それらしく」並べることで成り立っています。そのため、肉眼ではフラットにアニメ塗りされているように見えても、色調・彩度・明度を極端に変えてみると、このように独特の「色むら」があることがわかります。
もちろんデジタル絵でも、質感のあるテクスチャを貼るなどしてわざとこうした色むらを出すことはよくありますし、jpgに変換する際にブロックノイズが生じることもありますから、「色むらがあったらAI絵!」というような話では全くありません。ここで押さえておきたいのは、クリスタ上で画像編集する際、こうした色むらがあると「①塗りつぶしツールを使うなどしたときに別の色と認識され、狙った範囲をきれいに塗りつぶせない」「②背景の白い部分を透過しようとしたときに、一部のピクセルがゴミとして残ってしまう」—―といった現象が起こりやすいということです。
③「文脈のおかしさ」が生じる
AI絵はあくまで「それらしく」ピクセルを並べているだけなので、文脈上そうなるはずのない「作画ミス」を起こすことがよくあります。指が6本に増えたり、両手とも右手になったりする現象がよく知られていますが、地平線がキャラの左右で違う位置に出てしまうとか、よく見ると眼鏡のつるがないとか、文字がおかしい、変な位置におへそがあるといった「AI独特のおかしさ」がたくさん紛れ込むのが普通です。
①の「溶け」と違って、こうした文脈的なおかしさは身構えていないと見落としやすいポイント。「投稿前に一晩置く」とか「PCではなくスマートフォンの画面で見てみる」「投稿前の指さし確認表を作る」といった工夫をしないと、なかなか気づくことができません。指が多いとか衣装の構造がおかしいといった作画ミスをクリスタで直すのはかなり大変なことが多いので、できるだけ生成段階で気付いて直しておく必要があります。
④キャラデザインに矛盾が起きる
版権キャラクターのイラストで起きやすいのが、キャラデザ関連の矛盾です。襟の形状やカラーが設定と違ったり、あるはずのほくろがなかったり…といった生成ミスは、複雑なデザインのキャラクターほど頻繁に起こります。
▲サイドヘアは何色が正解?ポニテの長さは?セーラー服の線は何本?
AIも頻繁に作画ミスを起こすわけですが、操作する人間がそのキャラのデザインや設定などをよく知り抜いていないと、ぱっと見たときに違和感を覚えることができません。二次創作において「愛」を言い訳にするのを嫌がる人は多いかと思いますが、単純に自分のよく知らないキャラだと作画ミスに気づけず、そのキャラのファンからは「作品へのリスペクトがない」と感じられてしまうので、画像生成におけるとても怖い要素の一つだと思います。
<サブビュー機能を使いこなそう>
AI絵の修正においては、以上の4点をよく理解しておくことが重要です。ぱっとみて分かる低劣部分だけでなく、文脈上のおかしさはないか、キャラデザが設定と違っていないかもチェックする癖をつけたいところ。そのためには、クリスタの「サブビュー」機能を使えると便利です。
サブビューはその名の通り、メインキャンバスとは別に、任意の画像をサンプルとして表示できる機能。サブビュー上でクリックすると、その部分のカラーをいつでも「スポイト」して拾うことができます。つまり、衣装や瞳の色が「見本」と見比べるだけでなく、間違った部分を正しく塗り替えるのも簡単ということ。作業開始時、サブビューに見本を読み込んでおくだけで、行き当たりばったりな作画を避けることができます。
サブビューには同時に複数の画像を読み込ませることもでき、右下の「< >」ボタンでいつでも切り替えられます。版権キャラの公式資料などとよく見比べておかしいところがないか確認しましょう(※ただしコピペやトレスはしないように)。クリスタv5.0からは、参考画像をクリップボードから直接読み込ませることができるようになり、より便利になりました。
サブビューパレットは、デフォルトでは画面右上の「ナビゲーター」などに並ぶ位置にさりげなくおさまっていますが、さきほどのスクリーンショットのように大きくポップアップ表示させることも可能です。
詳しい使い方はこちらの公式マニュアルに書いてありますので、早めに使い方をマスターしておきましょう。
【前提3】デジタル絵の作画作業を理解する
クリスタ上で実際に修正作業を行うに当たっては、「レイヤー」をとりまく便利機能を理解する必要があります。そのためには、AIを使わない普通のデジタル絵がどう描かれているかを理解するのが効果的。実際に絵を描けるようになる必要はないので、流れを押さえておくだけでOKですが、もしよければ普段のAI絵を下記の手順で線画化して、実際に色を塗ってみると理解が早いです。
クリスタにおけるお絵描き作業の進め方は、アニメ塗りや厚塗り、水彩塗り、グリザイユ塗り(先に色のないグレースケール絵を描いて明暗を調整してから色を載せる手法)など技法によってさまざまですが、おおむね「ラフを描く▶ペン入れして線画にする▶部位別にフォルダ分けしたレイヤー構成を作る▶下塗り▶1影▶2影▶ハイライト▶各種仕上げ」…という流れで進めていくのが一般的かと思います。
こちらは昔AI線画を塗ったタイムラプス。最初にとりあえず一色で塗り分けるのが「下塗り」、ざっくり大きな影を付けるのが「1影」、ディティールの影を足すのが「2影」で、髪や目、肌など光っているところに「ハイライト」を入れた後、背景や文字入れを含めた仕上げを加えています。(※背景を最初だけ黄緑にしておくのは、塗り残し部分を発見しやすくするための工夫)
これを、クリスタ上で具体的にどう操作しているのか見ていきましょう。今回はこちらの透過済み線画を塗り進めてみますが、最初にAI絵からこのような線画を抽出する方法を紹介しておきます。(※ちなみに、このサムネイルにもある白とグレーの市松模様は「ここは透明ですよ」という意味です。念のため)
<高品質な線画を抽出するには>
カラーで出力したAI絵からきれいに線画だけを抽出するには、NanoBananaProか2を使って「白黒の線画にしてください」と指示するのが現時点では最も簡単できれいにできるかと思います。(Copainterなどを使う方法もあります)
この段階では背景が透過されていませんが、クリスタで読み込んだ後、「編集▶輝度を透明度に変換」をクリックすると、このように透過できます。
これは「輝度」の高い(白い)部分ほど透明度が高くなる便利機能。ただ、先ほど説明した通り「AI絵には色むらがある」ので、輝度の低い白部分が微妙に残っています。肉眼ではきれいに透過できたように見えるのですが、オートアクションの「デジタル線画ゴミ確認用」を使うと、このようにゴミが点在していることが分かります。(赤くなったところに何かしらのピクセルが存在するということ)
▲白黒の線画に見えても、色むらがゴミとして点在している
よりくっきりさせたい場合は、「編集▶色調補正▶トーンカーブ」を選びます。これは、画像の明るさやコントラスト、色合いを自由に調節できる機能ですが、次回の「仕上げ編」でも出てきますので、詳しい解説は後回し。
ともかくこちらのGIFの通りに、直線上の左下と右上の2点をクリックしてドットを表示させ、それぞれをこの形にドラッグしてください。こうして「OK」すると、画像上の薄い所はより薄く、濃いところはより濃く表示されるので、結果白でも黒でもない「色むら」部分を一発で全滅させることができます。
トーンカーブ作業後に「輝度を透明度に変換」すると、さきほどより純粋な線画を得ることができました。肉眼では違いが分かりませんが、さきほどの「ゴミ確認」オートアクションで見ると、透明部分にばらまかれていたゴミがきれいに消せています。
<塗り作業の進め方>
きれいな透過線画が得られたので、次にやることは「下塗り」です。
一つのレイヤーにどんどん色を塗っていくのではなく、部位ごとに細かく「フォルダ分け/レイヤー分け」をして塗っていくのが普通です。下図はオートアクション「塗りレイヤーセット作成アクション」で作れるフォルダ分けですが、髪・瞳・服・肌などのフォルダごとに「ハイライト・明るさ・色味・影・陰・ベース」のレイヤーに分けられています。
「ベース」がこれからやる下塗り用のレイヤーで、「陰」が最初に塗る「1影」、「影」がディティールを作る「2影」。階層が上に行くほど後に塗り重ねられる順序になっているのがポイントです。肌の上に服、白目の上に黒目、目の上に髪が重なる位置関係にあるので、レイヤーも普通はその順に置いて、下の階層から上の階層へ塗っていくことになります。
<参照ボタンとレイヤーロック>
レイヤー構成の一番下には一面同一カラーで何も描けない「用紙レイヤー」、一番上に線画の透過レイヤーが来ることが多いです。こうすれば、線画の上に色がはみ出すことなく塗っていけるからです。線画レイヤーでこちらの「参照」ボタンを押しておくと、塗りつぶしツールが常にこの線画の形を参照してくれるので、きれいに塗り進めることができます。
さらに「レイヤーをロック」しておくと、このレイヤーにはいっさい何も変更が加えられなくなりますので、線画レイヤーに間違えて色を塗ってしまう悲劇が防げます。
用紙レイヤーは基本は真っ白ですが、「レイヤープロパティ」で任意の色に変更できます。
用紙レイヤーをキャラクターに絶対使わない色にしておくと、このように塗り残しが見分けやすくなって便利です。AI絵でも、背景を自分で用意する場合はこの機能が役立ちます。
<なぜレイヤー分けするの?>
画用紙に絵を書くとき、当たり前ですがこんな作業はしませんよね。一見面倒に見える工程ですが、クリスタには「クリッピング」や「合成モード」、「レイヤーマスク」といった便利機能があるので、このように部位ごとにレイヤーを分けたほうが、各段に塗り進めるのがラクになるのです。
一つのレイヤーで塗り進めてしまうと、あとから直したくなってもどうにもなりませんが、部位・塗りごとにしっかりレイヤー分けされていれば、あとから「肌の色合いだけ」「ここの影だけ」といった感じで容易に修正することが可能になります。
(※CLIPSTUDIO PAINT USER GUIDEより「レイヤーとは」の項目。実際は塗りレイヤーがもっと細かく細分化される)
それぞれの解説はクリスタの専門記事がいくらでもあるので検索していただくとして、本稿では全てをすっ飛ばして、AI編集に必要な「コア」部分の知識だけを紹介します。例えば「肌」の「ベース(=下塗り)」レイヤーを選んで、このように肌色をバケツ塗りしたとします。「他レイヤーを参照」モードのバケツツールなら、線画の範囲に合わせてこのように色を敷き詰められますね。
バケツ塗りといえば、線画が完全に閉じていない領域に色を流し込むと、こんな感じで画面全体に塗られてしまうもの。ただ、クリスタはたいへん賢いので、バケツツールなどに「隙間閉じ」という機能があります。
レベルが5段階ありますが、真ん中くらいにしておけば、これくらい途切れていても空気を読んで塗りつぶしてくれます。(その代わり、本来塗りたい部分に染みこみにくくなる点に注意)
<重要機能1.下のレイヤーでクリッピング>
この肌色レイヤーのすぐ上に新規レイヤーを作ります。さっきのオートアクションを使っているなら、すぐ上にある「陰(=1影)」レイヤーを使います。そうしたら、おもむろにこちらの「下のレイヤーでクリッピング」を押しましょう。これは、AI絵の修正でも非常によく使う機能です。
このようにレイヤーの横にピンクの縦線ができ、すぐ一つ下のレイヤーで色が塗られた場所にだけ色を塗ることができます。何もないところに何か描こうとしても一切反応しませんので、下塗り(肌色)の外にはみ出す恐れがないわけですね。詳しくは公式マニュアルを参照のこと。
とりあえず影を描きたいので、グレーを選択してぐりぐり適当に塗りました。やばい色ですが、とりあえずはみ出さずに影を塗ることができていますね。
<重要機能2.透明ピクセルをロック>
ちなみに、「下のレイヤーでクリッピング」しなくても、はみだしを防ぐ機能がもう一つあります。こちらの「透明ピクセルをロック」ボタンです。
こちらをオンにすると、いま選んでいるレイヤーの「透明部分には」何も描くことができなくなります。逆に言えば、「透明ピクセルをロック▶塗りつぶし」すると、一発でその部分の色を変えられるというわけ。何が便利かというと、このようにキラキラを配置したあと、「透明ピクセルをロック」して…
上からグラデーションツールを掛けるだけで、思った通りのイメージになるまで何度でも任意の色に塗り替えることができるわけです。超便利。
「下のレイヤーでクリッピング」は複数レイヤーで、「透明ピクセルをロック」は単一レイヤーではみ出しを防げる機能というわけですね。
複数の色の案を残しておきたいときはクリッピングで、一発で決められるなら透明ピクセルロックで塗るとよい感じ。AI絵の修正のほか、色合いや質感を調整するのにも不可欠な機能ですので、最初に両方マスターしておきましょう。
<重要機能3.合成モード>
さて、話を基に戻します。さきほど灰色で塗ってしまった影のレイヤーの合成モードを「焼き込みカラー」にしてみましょう。灰色だった適当影が、なんだか肌の影っぽい色に変わりました!
「何だよその合成モードって…」となるわけですが、これも次回やるので説明はすっとばします。「あとから色を載せるときに、混色のできない我々でもなんかいい感じにしてくれる選択肢がいっぱいあるんだなあ」程度に覚えておけばOK。
・今選んでいる色をそのまま上塗りしたいときは「通常」
・影を描きたいときは下地と似た色で「乗算」
・発光させたいときは明るい色で「加算(発光)」、色付きでギラつかせるなら「覆い焼き発光」
・淡く色を重ねたいときは「スクリーン」「オーバーレイ」
・強く色を重ねたいときは「ハードライト」
がいいらしい…?くらいのふんわり感で問題ありません。詳しく知りたい場合は公式の「描き方ナビ」をどうぞ。
<重要機能4.不透明度の調整>
もう一つ重要なのが、レイヤーの「不透明度」です。レイヤーに描いたものは、基本的に「不透明度:100%」で表示されています。こちらのスライダーで数字を小さくしていくと、そのレイヤーに描かれたものがどんどん透明になっていきます。「不透明度:0%」だと、レイヤーを非表示にしたのと同じことです。
たとえば、顔の上に重ねたテキストレイヤーを「不透明度:50%」にすると、このような感じで後ろのレイヤーが透けます。単純ですね。
これを応用します。さきほど「焼き込みカラー」モードで灰色に塗った(結果、いい感じに影色に合成された)レイヤーの不透明度を弱めてみましょう。このままだとちょっと影のカラーが強いですが…
不透明度:50%にすると自然な影色に調整できました。
もちろんビビッドな色のほうが合うこともあるのでケースバイケースですが、ここまで紹介した三つの重要機能=「下のレイヤーでクリッピング(透明ピクセルをロック)」+「合成モード」+「不透明度の調整」をマスターするだけで、相当できることが広がったはずです。
<まとめ>
さて、通常のお絵描きではこの塗り作業をひたすらフォルダごとに繰り返していくわけですが…もちろん、これをAI絵でやれという話では全くありません。クリスタを使うと、こんな感じでレイヤーの便利機能をガンガン使って、はみ出さず、色合いを計算する必要もなく、サブビューでお手本を見ながら便利に塗り進められる…ということを理解できればそれでOKです!
先ほどの「サブビュー」に見本のミナちゃんを表示しておけば、そこからスポイトで色を拾って、ひたすら流し込んでいけば数分で下塗りが完成しちゃいます。ここまで全く線は引いておらず、ただ「ぽちぽち」しただけです。
各レイヤーの左側にある目の形のボタンを押すと、レイヤーを一時的に非表示にできます。線画レイヤーを非表示にするとこんな感じ。科学の力って…すげー!
目のボタンはこれ。ボタン上を右クリックして、他を一括非表示/非表示することもできます。
あとはそれぞれの下塗りレイヤーの上に、さきほどの手順で赤い線がついたクリッピングレイヤーを作ってはみ出しを防ぎ、「乗算」やら「加算(発光)」やらの合成モードでそれらしく塗るとこうなります。
小手先で網点水玉グラデを使っているのでなんかそれらしいですが、線画を読み込んで以降、クリスタ上では全く線を引いていません。せいぜい水玉グラデを入れるためにぐいっとドラッグしたのと、髪や目のハイライトや質感をDLしてきたアセットでちょんちょん・なでなでした程度です。遊び塗りなので、塗り残しチェックすらしていませんが、これが楽しい!
下塗りどころか1影、2影、ハイライト、あまつさえ背景までAIにお任せしている我々の場合、全く線を引けなくても、クリスタの操作法と理屈を理解してぽちぽち・なでなでするだけで、絵の修正や仕上げはかなりの範囲ができてしまいます。
前髪の影が鼻先にどう落ちるかをペンタブで表現するとか、目の表情を変化させるといったことは絵心がないとできませんが、「クリスタの各種機能を理解すると、線を引けなくてもできる加工がたくさんある!」ということを強調できたところで、ここからようやく後半の実践に入っていきます。
実践
ここまでで
・「レイヤーは下から上に塗り重ねていくのが基本」
・「クリッピング機能や透明ピクセルのロックを使うことではみだしを防げる」
・「上に載せるカラーは合成モードであれこれ変えられる」
・「レイヤーの"不透明度"を変化すると自然になじませられる」
ということが理解できました。あとは、これを「第2回」で導入したオススメ素材と組み合わせるだけで、たいていの修正ができるようになっています。
今回の題材は、人気モデル「WAI Illustrious SDXL v16」で生成したこちらのイラスト。
プロンプトは「1girl, upper body,masterpiece,best quality,amazing quality,expressionless, open eyes,solo,messy hair,aqua hair,purple eyes,general,flat color,looking at viewer,(white background, simple background:1.3)」です。「flat color」を入れたことで、色のグラデーションがほぼなくなり、加筆修正がやりやすいタッチになっています。(※Hires+ADetailerで1024x1408pxから1.5倍にしています)
瞳の修正
今回は、イラストの中でも一番目を引く「瞳の修正」をやってみましょう。生成画像を直接開いてもいいですし、コピーして「ファイル▶クリップボードから新規作成」で、クリスタ上にすぐ読み込むこともできます。
拡大するとこのような感じで、かなりきれいに生成できていますが、ハイライトが法則的でなかったり、カラーが「段」になっているところがあります。
まずは瞳(黒目)の部分からやっていきます。レイヤー構成を見てみましょう。現在は真っ白で何も描き込めない「用紙レイヤー」の上に「レイヤー1」としてAI絵が読み込まれた状態です。レイヤー1に直接塗ると直せなくなるので、こちらの四角い「新規ラスターレイヤー」ボタンで、通常のレイヤー(ラスターレイヤー)をその上に作りましょう。
このように、レイヤー2ができました。第2回で紹介した「主線も水彩も厚塗りも一本でやる怠けものブラシ」と、スタイラスペンのボタンに割り当てたスポイト機能でここに塗っていきます。
ペン先の大きさが画面上に表示されるので、ちょうどいい大きさに調整しましょう。周辺の色(ここでは紫)をスポイトして、おもむろに塗っていきます。この記事では、以下のような呼称で修正していきます。
瞳の塗り方は最も個性が出る部分の一つ。描き手によって千差万別ですが、WAIの瞳はいまの流行というか、ごくスタンダードな瞳の塗り方をしていると思います。ただ、下側に塗られた「ライトカラー(薄い紫部分)」の形状が今一つなので、「ベースカラー」の濃い紫で塗りつぶしてしまいました。影部分はこのままでよさそうですね。(瞳孔の左右が揃っていないことがよくあるので、もしそうなら直しましょう)
次は、かなりがたついている黒目のふちどりです。WAIモデルは「小さい白いハイライトを散らすとカワイイ」と学習しているようですが、低劣に見える原因になっているので、いったん除去してしまいます。これも、途切れているところを「怠けものブラシ」で繋げただけです。
自然に丸くできなかったところは、消しゴムで削るか、隣の白目などの色をスポイトして、上から塗って削ることができます。が、せっかくなら、クリスタver5.0で導入された「スマートシェイプ」を使ってきれいなラインを引いてもらいましょう。
<TIPS①:スマートシェイプを活用しよう!>
今回は線を引かないルールですが、スマートシェイプを使えば、絵心がなくても思い通りの線を引くことができます。
こちらのGIFは分かりやすいように赤い線でラインを引いた例。線を引いたあとに0.7秒長押しするとスマートシェイプが発動し、道中でおおむね正しいラインを通ってさえいれば、後からこのように簡単に角度を合わせることができます。もっとがくがく震えていても、中間で正しい部分を通っていればOKですので、落ち着いてゆっくりなぞりましょう。
これを使えば、かなりレタッチが簡単になります。例えばこのように、線画部分には構わずに雑にベースカラーで塗りつぶします。
今度は、新規ラスターレイヤーの隣にある「新規ベクターレイヤー」ボタンでベクターレイヤーというものを上に作ってみます。これは第1回でも説明した「描いた線画が後から編集できるレイヤー」です。
先ほどの要領で、スマートシェイプを使って縁取りをきれいに描きます。オブジェクトツールを選択して引いた線を選択してみると、後から位置や太さ、色、ブラシ種類を変更することができるようになりました!
こちらは、あとからブラシを「ざらつきペン」だったことにしたところ。アナログ風ににじんだ線の質感に変化しました。線画の太さも自由に変えられるので、正確に線を引けない我々でも苦労せずに縁取りをレタッチすることができます。
あとから線画の色を変化させることもできます。線画の色はかなりイラストの印象を左右するので、次回の「仕上げ編」で詳しく見ていきたいと思います。
あとは、ベースの紫と線画の黒の間にレイヤーを追加して、黒目やライトカラー部分を塗ったり、「乗算」モードで紫を塗って影を付けたりするだけですね。影のラインも自信がなければスマートシェイプに頼ればOK。
ちなみに、塗った部分はあとから「編集▶色相・彩度・明度▶色相」でずらすことができます。オレンジだろうか水色だろうが、同じ彩度・明度の色に好きなだけ変更可能。これも、レイヤーを小分けして塗る便利なポイントの一つです。
<TIPS②:投げなわ塗りツールを活用しよう!>
スマートシェイプの話はこれくらいにして、さきほどの作業に戻りましょう。こちらの目は、前髪のひと房が黒目のふちと同化してしまっています。これは作画ミスとは言えませんが、引きで見たときになんとなく気持ち悪さに繋がっているので、「投げなわ塗りツール」でできるだけ簡単に直すやり方を考えてみます。
まずは新しい前髪を作る新しいラスターレイヤーを作ります。投げなわ塗りツールは、このように囲った部分が選択色で塗りつぶされるツールです(残念ながらブラシではないので、スマートシェイプは不可)。これを使って、まつ毛と新しい毛先を整形してみましょう。
まずはこのように、怠けものブラシで毛先を黒く塗りつぶしました。
まつ毛のトガリもやや汚いので、投げなわ塗りツールで囲っていきます。このように三角にとがらせては離すだけ。失敗したらペンタブのやり直しボタンを連打しましょう。
まつ毛の中は黒一色で塗りつぶすより、白~灰色で線をハッチングしたほうがカワイイ、とWAIモデルは理解しています。でもちょっときれいにハッチングが出ていないので、余計なものは塗りつぶしました。
あとは、もう一つレイヤーを上に作って、髪の毛のカラーを拾って毛先のある場所をまつ毛と同じようにキュッと囲うだけです。簡単ですね。
これは、アップでは自然かどうか分からないので、引きで見たほうがやりやすいです。
今度は、先ほど塗りつぶしてしまったライトカラー(明るい紫)を自分で載せます。怠けものブラシでぐりぐり丸く塗るだけでOK。「編集▶色相・彩度・明度▶色相」で、自分の好みのカラーに変えても楽しいです。
おおむねできたので、ここからは細かな整形です。矢印した部分に低劣さやミスを感じたので、それぞれ側のカラーを拾って怠けものブラシと投げなわ塗りツールで塗りつぶしました。こちらが比較GIF。
ごく細かいところですが、まつ毛の先が髪の毛と接してしまっていたところを離しています。先端が別の部位と接するのはAIあるあるですが、これこそがAI絵の鑑賞しにくさの主要因になっていると感じるので、少し脱線して触れておきます。
<コラム:錯視を誘う「タンジェント」>
AI絵は線の終わり(特に髪の毛・まつ毛・まぶたラインなど)が別のものとくっつくことが非常に多いのですが、これは絵画や写真では「タンジェントしている構図」と言われ、伝わりにくさ・気持ち悪さに繋がる「良くない構図」とされています。
こちらの解説が分かりやすいのですが、別々の物体の輪郭が意図せず接線のようになる(タンジェントする)と、位置関係やシルエットが分かりにくくなってしまいます。物体のアウトライン、つまりシルエットがぱっと見でわかりにくくなるので、塗りつぶしで直せるなら直しておくとよいでしょう。
AI絵で線と線が溶けてしまうと、単に低画質になるだけでなく、意図せず「錯視」も促してしまうわけですね。これが、AI絵の「もっともらしいのに伝わらない・気持ちよくない・目が滑る」印象の一因になっているのではないでしょうか。人間は思っている以上にシルエットでものを見ているので、一目でシルエット(輪郭=線画)がどうなっているのか分かりにくい絵は、気持ちよく感じにくいのです。
こちらの絵をご覧ください。左は歌っていることがすぐに分かりますが、右は分かりにくいですね。よく見ると胸元にマイクを握っているのですが、シルエットからそれが分からないので、あまり良い構図とは言えませんし、見ていて気持ちよくありません。
これはポーズが派手であればいいということではなく、単純にカメラ位置の問題です。
右のポーズでも、少し横方向に角度を付けたら、胸元にマイクを持って歌っていることがより強調できるシルエットになるはずです。右のミナちゃんを写真で撮ろうとしたら、私ならしゃがんで右下からアオリで撮ります。すると、こんな感じのシルエットにできるはずです。
もっといえば、皆さんはこのシルエットだけでミナちゃんであることが分かったのではないでしょうか。これは新衣装を作るときに、シルエットで誰だか分かるようなキャラクターデザインになるよう(素人ながら)試みたためです。だぼっとしたカーディガンやルーズソックス、アホ毛、セーラー襟などが一応特徴のあるシルエットを作ってくれている…といいな…
ぼっち・ざ・ろっくなど流行の漫画・アニメを見てみると、主要キャラがシルエットだけで見分けられるように工夫されていますし、ポスターやフィギュアなどは魅力的なシルエットになるようこれでもかと計算しているのが伝わってきます。
独特の形のアホ毛が流行しているのも、実はこのためだったりするのかも。私はまだまだですが、タンジェントやシルエットのことを知っていると、AI絵の修正だけでなく、魅力的な構図やオリキャラづくりにも生かすことができると思います。
コラム終了。話をクリスタに戻しましょう。
最後に、一番上のレイヤーで大ハイライトを入れます。今回はシンプルな白なので、怠けものブラシでぐりっとして終わり。ちなみに、ハイライトは大きいほどかわいく、小さいほど神秘的な印象になります。当然、左右で位置を揃えないと不自然になるので、バランスを決めて調整しましょう。
左右見比べてみて、「あれ?あれこれやった割に、意外と魅力的になっていないな」と感じたのではないでしょうか。これはあくまで修正の工程ですので、AI独特の現象でマイナスになっている部分を0に戻すだけです。より魅力的・個性的にするやり方は次回の「仕上げ編」で紹介します。
<生成段階で作業をラクにしよう>
後だしですが、実は低劣なハイライトをいちいち塗りつぶす必要なく、始めから作業を簡略化するやり方があります。こちらは最初に生成する際に、プロンプトに「empty eyes」を加えて生成したもの。
ハイライトやライトカラーがあった時より、瞳の塗りが格段に楽になるのがわかるでしょうか?モデルとしても、empty eyesの塗り方は非常にシンプルですので、安定してピクセルを並べることができるようです。
ここに、ただ白ハイライトを置いただけでこうなります。
ライトカラーも省略されているので、さきほどの手順で塗りましょう。もし線を引いてよいなら、「覆い焼き(発光)」モードのレイヤーを作って、うすい黄色でちょんちょんするとこんな感じでかっこよくすることもできます。絵心関係ないです。
「ちょんちょん」が難しければ、「虹色ハイライト改」ブラシをダウンロードしてきて、U字に撫でるだけで終わりです。U字もきれいにできないときは、0.7秒ホールドしてスマートシェイプを発動しましょう。
こちらは「ハイライトブラシ」(100CP)セットに入っているギザギザしたブラシで同じようにしたものです。毎回同じ位置にハイライトとカラーを置くだけでも、個性をはっきり出せると思います。
これは修正というより仕上げの工程ですが、クリスタでの工程を考えて画像生成すると、より少ない作業でゴールに近づけます。絵心がない場合ほど、生成段階の工夫が大事になると感じています。
上級編:ハイクォリティな厚塗りを直すには
最後に「上級編」として、WAI Illustrious SDXL本来の「マスピ顔」で生成したこちらのイラストを修正していきます。
先ほどの画像と同一設定で、「flat color」タグ抜きで生成したものです。アニメ塗りというよりは「厚塗り」に近い、AI絵でよく見る塗りですね。
一見先ほどのイラストよりハイクォリティに見えるのですが、アップにするとこのような感じで、ハイライトや毛先、ハッチングの溶け、タンジェントがいたるところで発生しています。その上、フラットな塗りではないために、隣接する色での塗りつぶしが通用しません。
線と線がくっついている部分だけでもこんな感じ。ここを一つ一つもし直したとしても、見栄えが良くなるかというと微妙な気がします。
このような場合は、エアブラシの「柔らか」を使って、なんとなく周囲の色をふんわり載せてごまかしていくほかありません。瞳の中のベースカラーと影だけを塗り直してみましたが、あまりよくなった感じはしませんね。
あとは、ハイライトを最初のものより大きくとって、上から重ねて形状をごまかすことはできます。ここでも、先ほどのempty eyes法でハイライトなしのバージョンを作ったほうが楽かもしれません。
引きに戻すとこのような感じ(左側はそのまま、右が瞳の中だけ修正後)。このようにハイクォリティな画風だと、線を引かないでできることは少ないです。元画像にあった質感が塗りつぶされてしまうので、むしろつまらない絵になった気がします。
瞳の中だけでもこの状態ですから、イラスト全体では無数の溶けやタンジェントが発生していることが想像でき、これなら修正してもしなくてもあんまり変わらないような気もしてきます。
かといってこのように、さきほどの「初級編」のノリでがっつりとフラットに塗るのもいただけません(※向かって右の目だけ修正)。自分では目が慣れてしまってよく塗れたように思いこんでしまうのですが、その部分だけタッチが異なるので、周囲とはっきり浮いてしまいます。
このようなハイクォリティ塗りの場合、絵心のない人間によるかんたん修正はほぼ不可能なので、手の修正のときのようにNanoBananaを使ったほうがスムーズです。
こちらは、NanoBananaProに当該画像を入力して「瞳や髪の描写が甘い部分を修正してください。アートスタイルやポーズ、構図、ライティングの変更はせず、高精細に再描画してください。」と指示したもの。
ただ、今度は全体がバキバキに高品質化されてしまって、ちょっとやりすぎの感があります。プロンプトを調整してやり直してもよいのですが、このような場合は、「元画像と修正画像をレイヤーで重ねてなじませる」という、いわば「人力ADetailer」のようなテクニックがあります。
<TIPS③:人力ADetailer>
やり方は簡単。修正前と修正後の画像を全く同じサイズで用意して、「いいとこどり」をするだけです。
まずは、先ほどの画像(修正前)をもう一度NanoBananaProに読み込ませて、「何も変更しないでください」というプロンプトで生成させます。こうすると、修正後と全く同じサイズ・アスペクト比になった元画像を得ることができます。(NanoBananaProなどに修正を頼むと、元画像とサイズ・比率が変更されて重ねにくくなるため)
NanoBananaProに生成させた2枚をクリスタに送り、レイヤーで重ねます。
上に元画像、下に修正画像を入れたら、上の画像を柔らかい消しゴムで削っていくだけです。このように、削った部分から下の画像が露出するので、修正前・修正後の「いいとこどり」をすることができました。ただし、境目が矛盾してしまうことがよくあるので、ちゃんと周囲とつながっているかよくチェックしながら作業を進める必要があります。
<重要機能5:レイヤーマスク>
ペンタブのボタンでいつでもやり直しはできますが、あとから「削りすぎ」に気づいたら、元に戻すことができず困ってしまいます。こういう時に便利なのが、今回ラストの重要機能「レイヤーマスク」です。詳細は公式TIPSに詳しいのでこちらをご覧いただくとして、この機能を使うと、あるレイヤーのどの部分を表示するかを白黒のシルエット(マスク)で操作することができますので、レイヤー画像を壊さずに「見え消し」で作業を進めることができます。
レイヤーマスクはこちらの「●」ボタンで作成できます。ある部分を選択した状態で「●」ボタンを押せば、その部分だけをマスクすることができます。
あとは先ほどと同じように、マスク上で消しゴムを掛けると下のレイヤーがそこだけ露出して、片目だけハイクォリティになります。しかし、これが削りすぎてしまったとします。
そういうときは、消しゴムではなく適当な色のブラシでマスク上を塗るだけでOK。再び、非表示になっていた部分を元に戻すことができました。
マスク範囲がいまどうなっているか分かりにくいときは、マスクアイコンを右クリックして「マスク範囲を表示」すると、このように可視化することができます。まさにADetailerみたいですね。
エアブラシではなく、固いブラシで描くとこんな形になります。マスク機能は今回紹介した機能の中ではやや難解なのですが、自由に使えるとAI画像のレタッチにも大いに役立つので、解説記事などをしっかり読んで理解しておくことをおすすめします。
小括
というわけで、第3回はようやくの実践編でした。
フラットな塗りであれば、クリスタの力をフルに借りることで素人でも編集可能ですが、グラデーションやライティングが複雑になったハイクォリティの塗りは手作業でごまかすことは難しいです。それは言ってみれば、「自分の手に負えない厄介な画風をチョイスしてしまっている」ということでもあります。
せっかくAIを使っているのでどんどんハイクォリティなものを目指していきたくなるのですが、自分の画力でも修正が利く画風の範囲におさめておいたほうが編集性が広がりますし、自分らしさも出しやすいように思います。ただ、「ここ一発だけ、オリキャラを超ハイクォリティな瞳にしてあげたい!」という時などは、NanoBananaProを使った人力ADetailerでバチバチに激カワな瞳にしてあげるのも楽しいですね。
※ただしバランスは重要
次回は「仕上げ編」。描画ミスやタンジェント部分の修正が終わったAIイラストを、色調調整やエフェクト追加などの手法でより魅力的・個性的に仕上げていく方法を見ていきます。特に今回紹介した線画抽出法と組み合わせると、AI絵の表現の幅が一気に広がると思います!
<第3回に続く>
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